JP_009_GrabCAD Print: PolyJet VeroUltraClearを材料に使った3Dプリンティング

VeroUltraClearはガラスのような外観の透明で硬質な3D造形材料です。プロトタイプのニーズに合わせて最適な造形を行う方法を見ていきます。

  1. Step 1: はじめに

    VeroUltraClear(RGD820)は、既存のVeroClearに改良を加えた、透明で硬質の新材料です。ガラスのような外観で、現在市場に出回っている3D造形材料の中でもっとも透明度が高い材料です。

    VeroUltraClearの機械的特性は他のVero材料と同様であるため、つぎの用途に最適です。


    • 形状および嵌合テスト
    • 透明な熱可塑性プラスチックのシミュレーション
    • コンセプトモデリング
    • 透明な部品の設計検証


    このチュートリアルでは、最大限の成果が得られるよう、VeroUltraClearを使った造形方法および造形したモデルの加工方法に関するいくつかの指針を示します。

  2. Step 2: 技術仕様

    対応するプリンタと造形モード

    組成:

    VeroUltraClearを使った部品は、実際はVeroUltraClearをコアとし、VeroClearでコーティングするデジタルマテリアルとして造形されます。

    GrabCAD Printの設定にあるVeroUltraClearデジタルマテリアルのオプション


    光透過率と黄色度に関する統計情報:

    つぎの表は、ストラタシスの透明材料とポリメタクリル酸メチル(PMMA)の光透過率と黄色度のレベルを比較して示したものです。これらの結果は、PolyJet 3Dプリンタを使って造形した厚み6mmの部品から得られたものです。

  3. Step 3: VeroUltraClearの造形に向けた準備手順

    他の材料が残っていると、VeroUltraClearの透明度に悪影響が出る可能性があります。透明度を最大限に高めるため、つぎのことを行います。


    • 他の材料からVeroUltraClearに切り替える場合は、[Material Replacement]ウィザードを実行し、システムを十分フラッシングします。
    • [Cleaning]ウィザードを実行し、造形ヘッド、ローラー、ワイパー、ローラーバスを十分清掃します。
    • STLファイルを造形する場合、透明な部品はVeroUltraClearのコアを厚み0.5mmのVeroClearでコーティングして造形されます。最適な造形を行うため、外壁の厚みは1.3mm以上にする必要があります
    • テクスチャごとに色が異なるタイプのVRMLファイルを造形する場合、透明な部品はVeroUltraClearのコアを厚み1mmのVeroClearでコーティングして造形されます。最適な造形を行うため、外壁の厚みは2.2mm以上にする必要があります
  4. Step 4: VeroUltraClearを使った造形方法

    a)VeroClearとVeroUltraClearの両方をマテリアルキャビネットに充填します(VeroUltraClearが実際は、2つの透明材料によるデジタルマテリアルであることを覚えておきましょう)。

    b)可能な場合は、表面仕上げをマットにして造形します。マット仕上げの場合、表面を覆うサポート材によって部品の層が過剰な紫外線から保護されるため、透明度が向上します。

    グロッシー仕上げで造形する必要がある場合、すべての部品の高さが同等になるようにトレイに並べます。そうすることで、高さのある部品の造形が終わるまでに、高さのない部品が不要な紫外線を受けるのを防ぎます。

    高さが同等の部品

    c)X方向面およびY方向面の透明度を最大限に高めるため、部品を45°に傾けて配置します。

    向きを45°に傾けた部品

    d)場合によっては、透明なテクスチャのVRMLを造形する際に、バンパーエラーによってジョブが停止することがあります。このような状況が発生したら、グリッドタイプを[ライト]から[ヘビー]に変更し、再度造形してください。


    VeroUltraClearを使った造形に関するその他の情報:

    VeroUltraClear製部品の品質を最大限に高めるため、GrabCAD Printでは、自動的に以下のように設定が調整されます。


    SUP705のHigh Speedモードで造形する場合:

    • 補強された厚み3mmの台座

    • グリッドタイプはヘビー


    SUP705のHigh Mixモードで造形する場合:

    • 補強された厚み2mmの台座

    • グリッドタイプはヘビー

    • トレイにグロッシー仕上げの部品がある場合はUVランプ1個を起動


    SUP706BのHigh Mixモードで造形する場合:

    • 補強された厚み2mmの台座

    • グリッドタイプはライト

    • トレイにグロッシー仕上げまたはマット仕上げの部品がある場合にUVランプ1個を起動


    J7シリーズプリンタでVeroUltraClearを使って造形する場合:

    カラーとテクスチャのプロファイルが自動的に[Vivid 1.1 D50 (Relative) – VeroWt]というプロファイルに変更されます(図4)。これはVeroBlackPlus™を含まないCMYWプロファイルであり、VeroUltraClearを使ったフルカラー3D造形が可能です。

  5. Step 5: VeroUltraClear製部品のサポート材除去

    ウォータージェットを使ってサポート材を取り除く場合、洗浄時間は最小限に抑えてください。



  6. Step 6: VeroUltraClear製部品の光退色処理

    VeroUltraClearを使って造形した部品は、とくに表面仕上げにグロッシーを選択した場合、プリンタから取り出したときにわずかな黄ばみがあります。

    部品の黄ばみは時間の経過に伴って自然と薄れていきますが、適切な光退色処理を行うことで、このプロセスにかかる時間を短縮できます。光退色処理では、部品に強力なLEDフラッドライトを当てます。処理開始から6時間以内で、黄ばみの減少率はおよそ70%となります。24時間後には、黄ばみの減少率は95%となります。

    推奨される光退色処理方法として、つぎの2つの方法があります。

    方法A:照射チャンバーを使用する

    • 既製のチャンバー

    • 温度と光強度の制御が可能

    • 想定内の結果が保証される

    方法B:LEDフラッドライトを使用する

    • 容易に入手できる構成部品(内側に鏡を並べたキャビネット、100WのLEDフラッドライト、昼光色6500K)を自分で組み立てる

    • 低コストの対処法

    • 温度と光強度を精密に制御できないため、結果にばらつきが出る

    光退色処理の手順:

    1.造形後すぐに、部品をキャビネットまたは照射チャンバーにセットします。

    2.造形した部品を各部品の全面に光が届くよう、部品間に十分な間隔をあけてキャビネット内に配置します。

    3.ライトをONにします。周囲温度が30~40℃であることを確認します。温度が高いと部品が変形する場合があり、低いと十分な退色効果が得られない場合があります。

    4.処理開始から6時間後に、モデルを検査します。

    • マット仕上げの部品の場合、6時間で十分であると考えられます。

    • グロッシー仕上げの部品の場合、求められる退色効果を達成するため、最大24時間光退色処理を継続します。

  7. Step 7: VeroUltraClear製部品の接着

    VeroUltraClearを使って造形した部品を接着する場合には、接合部分の透明性を確保するため、透明な接着剤を使用します。

    接着剤がついた表面を最小限に抑えるため、必要な部分にのみ接着剤をつけます。

    接着剤の耐紫外線性を確認してください。紫外線への耐性が高いということは、紫外線にさらされても黄ばみにくいことを示します。透明でないモデルや隠れた部分の場合、多少の黄ばみは重大な問題にはなりませんが、透明なモデルの場合、外観に影響が出る可能性があります。ガラス用の接着剤か、ロックタイトなどの3Dプリンティング専用の接着剤を使用します。

  8. Step 8: VeroUltraClear製部品の艶出しまたはラッカーの塗布

    透明なモデルはプリンタから取り出した際、マットな表面仕上げに混じって、100~120µmのモデル材で覆われています。

    研磨またはラッカー塗装によってこの層を除去すると、透明な材料で造形された部品の外観と透明度が大幅に向上します。


    作業を始める前に、手作業による研磨および艶出しに関するこちらのチュートリアルに目を通すことを推奨します。

    1.      まず粒度が200~400の研磨紙で湿式研磨*します。これは透明度を最大限に高める上できわめて重要なステップです。まず粒度の低い研磨紙で除去できるものを取り除かないと、粒度の高い研磨紙の研磨効果が効果的に発揮されません。

    * 研磨工程では、水の使用を推奨します。湿式研磨対応の研磨紙を使用するようにしてください。

    2.      徐々に研磨紙の粒度を800~1000に上げていきます。

    3.      つぎのいずれかの方法で、この工程の仕上げを行います。

    A)     ラッカーを塗ります。そうすることで光沢が出て、保護層が加わるだけでなく、形状の隙間や欠陥が埋まります。仕上げに適したラッカーの一例として2Kが挙げられます。

    B)     粒度を500ずつ増やして、2500~3000まで上げます。その後、コンパウンドを使った回転バフ研磨機などのより高度な艶出し手法に進むことができます。これは、一部の自動車用途などで有効です。

    * ラッカーの塗布と艶出しの継続のどちらを選択するかは、個々の状況によって、また利用できる装置によって異なります。

    つぎの図は、作業の流れをまとめたものです。


    艶出しまたはラッカーの塗布によってこの層を取り除くことで、透明な材料で造形した部品の外観および透明度が大幅に向上します。

    艶出しの手順に関する詳細は、半透明の3D部品の作成に関する『後工程適用ガイド』を参照してください。

    これでチュートリアルは終了です。ご質問やコメントがありましたら、下に入力してください。

  9. Step 9: ベストプラクティスガイドのダウンロード

    このチュートリアルが役立ったという方は、いつでも利用できるようガイドをダウンロードしましょう。

    VeroUltraClearベストプラクティスガイド

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